NHK BSブレミアムで始まった「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本」。家族編のひとつが「若者たち」(1967年)だった。両親を亡くした五人兄妹のたくましく生活する姿を描いている映画。
43年前の作品。当時20歳だった若者は、いまや63歳。定年が60歳の企業に勤めていた人であれば、定年を迎えている。周りから口うるさいと邪険にされ始める歳でもある。そんな人たちが、おそらく自分の「青春時代」を振り返りながら観たに違いない。僕もその一人。
社会派の映画とも言われていた。描かれていたのはどんな社会だったろうか。物語の筋を追わずに、画面に登場する〈素材〉のさまざまを書き上げてみたらどうだろうか。
映画を思い出しながら、・・・。
五人兄妹、学生運動、どんぶり飯、ちゃぶ台、受験浪人、工場での労働、下請け労働者と本社社員との格差、アルバイト、広島原爆、被爆者との結婚、女性の自立、学歴と昇進、中小企業の弱さ、怒鳴りあい、殴り合う兄弟げんか、弱い者への眼差し、兄妹同士の信頼、恋愛、お金、働く者同士の支え合い、昼休みのコーラス、バレーポール、トラック運転手、偏見、政治不信、組合運動、・・・。
そして、2011年の現在(いま)。対応する〈素材〉を書き上げ、それらを使ったときに〈いまの若者たち〉の物語はどのように展開していくだろう。
一人っ子、あるいは二人兄妹(兄弟)がほとんどになって五人兄妹は稀な存在。けんかしようにも相手がいない。60年代末のような学生運動の盛り上がりもない。けれども、すべてが変わってしまったわけでもない。
変わったものと変わらないもの。
あるいは
変えなくてはならないもの。
映画「若者たち」が描いた時代との対比において現在(いま)を考える時間を、定年退職組といまの若者がもてればいいな、と切実に思った。
かつての若者たちが口ずさんだ歌。
♫『君の行く道は/果てしなく遠い/なのになぜ/歯をくいしばり
君は行くのか/そんなにしてまで/・・・』♫