〈大きさ〉を実感するために

アメリカ合衆国の大手金融機関トップが受け取る報酬を引き上げ始めた(『日本経済新聞』4月12日付)。金融危機後に批判の的になった高額報酬が復活しつつあるとの報道である。一例として挙げられていたのが、JPモルガン・チェースのダイモン氏(CEO)の報酬。前年比50%増の総額2300万ドル(約19億6000万円)。高額の報酬を得ている人は金融業界以外にもいる。

約20億円と聞かされたときに、何を思うだろうか。

「貢献に応じた報酬であるはずだからそのまま受け入れるだけです」、「自分が汗水流して労働しても、たかだか○○万円なのに」、「自分も高額報酬を得られるように起業したい」などなど。

日常経験から離れた〈大きさ〉を示されたときに、慣れ親しんだ〈なにか〉に置き換える。人間の労働(はたらき)への見返りとして報酬が与えられているのだから、具体的な働き方を想起すればいいだろう。時給1000円で働いている若者は、1日8時間で8000円得る。月に25日働けば、20万円。年収にして240万円。大学を卒業して定年まで勤め上げれば、だいたい40年間になる。大卒男性の生涯賃金は3億円程度と言われているが、この若者が上の条件で40年間働き続けたとすれば、9600万円、つまり約1億円が生涯賃金になる。

細かい点をばっさりと端折ってしまう。一人一年の働きが、約7人分(20億円÷3億円)、あるいは20人分の生涯をつうじた働きに相当する、と言い換えられる。ある人の働きを別の人に置き換えると、その〈大きさ〉を少しは実感できる。

目に見えないモノ、その測り方(単位)も了解しがたい場合に、モノの大きさを実感するのに有効な方法は何だろうか。現在進行中の出来事の〈重大さ〉が納得できるために必要なこと、そして、いま問われていることは、そんなことのような気がする。コアにおかれるべきは、〈生き続けるためには〉という視点だろう。

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